ティップの折れたジャンク6番フライロッドをアンバサダー5000に良さそうなベイトロッドにコンバート改造してみた
2019年10月に行った、バットの折れたジャンクフライロッドをスピニングロッドにコンバート改造するチャレンジにて、そもそもフライロッドはコンバートするならベイト向きという情報を得ていました。ひょんなことからアブ・アンバサダー5000を手に入れたので、いよいよ残り1本となったジャンクフライロッドをベイトロッドにコンバート改造することに。
自粛の中で釣り人はどうすべきか論争……にあまり巻き込まれずに好きなことをやるのである
コロナ禍、ですって。渦(うず)ではなく、禍(か)。わざわいということですね。2020年に入りジワジワと音を立てて近づいてきたその災いは、なにやら自粛という不思議な形で日本に定着し、ありとあらゆる不要不急の行動があくまで「自らの意思」により粛々と制限されています。
お魚釣りにおいては、錦ならぬ銀杏の御旗を率いる大きめマスクの元環境大臣女史が示して定着した「3密」に当てはまらないケースが多いながらも、多くの場合が「遠征」を伴うことで、現地の施設を全く利用しないとも限らないこと、利用せずとも緊急時の救助等で地元の方との接触の可能性が0ではないこと。それらさまざまな要因や考え方により、残念ながらほぼほぼ自粛の対象となっております。一部、アナーキストたちは我関せずと傍若無人の限りを尽くして竿ボロンやBBQジュージューしておりますが、当然私個人としては少なくとも遠征を伴う釣りはサスペンドせざるを得ませんでした。楽しみだった大尻沼解禁や巨大台風一過後の新生赤久縄も、手を伸ばせば(正確には、足を出せば)無理なく届く距離なのに、月のように遠くの存在になってしまっています。
むろん、経済優先論もあるため、あえてリスクや非難承知で釣行敢行というのも無きにしもあらずですが、論争に巻き込まれるのは避けたいので、論争に巻き込まれずに好きなことをやるというのをメインテーマとしてしばらくは行くつもりです。
小物釣りやガサガサに目覚める
前置きが長くなってしまいましたが、こんなコロナ禍のなかで何をするかといえば、少なくとも地元の範囲で済み、3密も避けられるとなれば、フライフィッシャーならば真っ先にタイイングや道具整理という「釣りの準備」が挙がるところです。ところがやはりタイイングというのは不思議なもので、常日頃問題なく巻き巻きできる方もいれば、糸屋の場合は釣行が迫ってやっと巻き出す、さながら夏休みの宿題を最終日にまとめて行うまる子ちゃん派なので、どうも気乗りしません。道具整理は、謎几帳面な人間なので、すでに整頓しきっています。
そこで一旦、フライフィッシング以外のことに手を出してみることにしました。まず行ったのは小物釣り。2019年秋頃に少し行ったガサガサの延長線ですが、家の水槽にいろいろな淡水魚を入れてみたいので、チャレンジしてみることにしました。大したことではないので結果のみいえば、2、3回行ってタナゴが釣れないまま後でまた行こうという感じに。モツゴばかりでした。フライとは対照的すぎる釣りですが、かなり楽しいですよ。ガサガサもまた追加でエビ取りがてら行いたいと思います。
ここにアンバサダー5000がある。6番のジャンクフライロッドがまだ1本ある。
ひょんなことからアブガルシアのアンバサダー5000というベイトリールを手に入れていたのですが、なにか活かせないものかと思いながらも、ルアー釣りがやはりそもそも守備範囲外のため、そのデザイン性の高さもあって飾り物となっていました。めちゃくちゃかっこいいですからね。しかし釣り道具は使ってなんぼ。ベイトロッドを調達するとあらば、そう、前回の企画の残りというか片割れというか、使わなかった方というか、SAGEの6番のジャンクフライロッドが1本あります。こちらはティップ部が折れているため、無理に繋げず、折れた部分を新たなトップガイドにして、ベイトロッドにしてみることにしました。
『フライロッドはコンバートするならベイトが向いている』
前回の企画で伺った、うらしま堂の旦那さんが仰るには、フライロッドはルアーロッドとしてコンバート改造するならスピニングよりベイトとのことでした。しかしベイトを忌避していた私としては、スピニングで見積もってくださいとお願いしたため、前回はスピニングロッドとしてSAGEの6番ジャンク2本継ぎのトップ部分は生まれ変わったわけです。
そして今度こそ、ティップ部分が少し折れていてどうするかという、これまた同じSAGEの6番ロッド2本継ぎを、頑張ってベイトロッドにコンバート改造してみようと思います。思いついたが最後、最後までやらないと気がすまない糸屋流。果たして結末やいかに。
誰も頼らず通販のみで完遂することは可能か
先述のとおりコロナ禍による自粛のさなかで、たとえ近距離とはいえ不要不急な外出をするわけにもいきません。うらしま堂へ再アタックしつつ、自作ルアーの道具類を改めて見てみるという目的も果たそうかとも思いましたが、あえて本音を言ってしまえば、「ひとりでできるもん」をやってみたいというのが8割がたを占めています。フライキャスティングで言えば、1回フォームを教わったらまずできなくてもいいから実践でキャストさせてくれ、と。他力なしで行うことで生まれた疑問というのは、それが解決されることでものすごく強力な技術や知識となります。
実を言えば、黄色い看板の中古釣具屋に1度行き、そもそものベイトロッドの形状や仕組みをみてきました。古い安物から新しい高いものまで。もちろん、お客さんの居ないときを狙って。アクション感やグリップまわりの構造はとても勉強になりました。
今度こそイシグロで通販して完遂するのだ
前回、候補にこそ挙がれど結局使わずじまいだった、通販サイト・イシグロ。神奈川にあるため実店舗に行けなくもないですが、仮にコロナがなかったとしても、何かのついででもなければそもそも交通費を考えると行くことはなかなか厳しいものがあります。ページ上で長時間にらめっこして、あれじゃないこれじゃないと難儀を極めるのは確実ですが、なんとかパーツをピックアップして購入することに決めました。
イシグロ(ロッドビルディングパーツ部門)HP:https://tackle-net.com/
持っているもの・必要なものを整理 設計図を作る
製作にあたり、SAGEのジャンクフライロッドをはじめ、すでに持っているものや土台になるもの、黄色い看板の中古釣具屋での調査やイシグロのページを参考に、購入が絶対必要なものを整理してみました。寝る前にこれを考えるだけで秒で眠りにつくことができたのですが、逆に全然進まず数日無駄にしたのは言うまでもありません。
想定したグリップまわりの設計図
設計図なのに想定とはこれいかにという感じですが、培ったノウハウがスピニング用への改造1回ぶんのため、調べたり吟味したり、とにかく大変でしたので、想定の範囲を出ない設計図という感じです。これでかろうじて行けるだろうという感じで作ってみました。先に言ってしまうと、どちらかといえば設計よりもイシグロの在庫との戦いという部分もありました。ほかの通販サイト(SABALOなど)を使うことも検討しますが、送料がダブルでかかってくるのもバカらしいので、イシグロ単発のみで済ませることに。結果からするとそれでまったく問題ありませんでした。
で、以下がその設計図。手書きで超失礼いたします。もとのフライロッドのリールシートやグリップ部分などをすべて取っ払って、ブランクスになったという想定。
※画像の補足:
中間ガイドの絵は省略しています
中央の縦線は紙の折目がスキャンで黒くなったので関係ありません
トップセクションが短くなっている都合上、元のロッドのバットセクションを少しカットします。カーボンパイプを接合後まとめてカットしました
いざ到着、宅配業者には大感謝しかありません
ここからは完成まで一気に作業の流れの報告となります。材料の到着から、接合、切断、接着、乾燥など、必要な作業を慎重に行っていきました。足掛け5日ほどかかりましたが、部屋の一部分を占領される以外は特に苦にはなりませんでした。こんななかで配達していただく宅配業者さんにはとにかく、とにかく感謝しかありません。ほんと頭が1mmも上がりません。
購入したもの一覧とそれぞれの役割など
カーボンパイプがどうしても長さを取るため、細長いダンボールか大きなダンボールで到着すると予想していたら、前者でした。到着後数日開けなかったのは素直に白状しておきます。やはり、積みゲー・積みプラモ・積ん読の才能はあるようです。
一覧をリストアップします
開けてみたらこんな感じ。小さくても技術の粋が詰まっているでしょうから、いいお値段になりました。送料を考えると、格安質実剛健の代名詞、鱒レンジャー2本ぶんくらいでしょうか。
カーボンパイプ
内径8mmはもとのブランクスに合わせたもので、外径10mmは既製品リールシートの内径に合わせました。もとのブランクスが7.6mm程度と半端なので、もとのブランクスにテサテープを巻いてかさ増しし、こちらのカーボンパイプをエポキシ接着する形です。
リールシート
リールシート選びはかなり難儀しました。結果から言えばこのACS-SD16-10.0で全く問題なかったのですが、ブランクタッチが可能というのが不必要ではないかと随分ひっかかり、ブランクタッチが無い旧モデルは在庫切れだし、あれじゃないこれじゃないと一番時間かかったのがリールシートまわりです。リールシートが決まってしまえば、以下のワインディングチェック類は在庫さえあれば問題なかったです。
このACSというのが上に上げたブランクタッチを搭載したモデルで、ほかにもECSというのがありましたが組み合わせ的に径が合わなかったり欠品が多かったりしたのでパス。ほしかった旧モデルのTCS関連は在庫切れで諦めた格好です。TCSはSABALOにはありましたが、SABALOだと今度は無いものがあったりする(安いガイドのセットがなかったのが致命的)ので、ほんとにもう、どっちつかずの状態でした。
SD16の16という数字は一般的な釣り用を示すもので、17、18と増えると、より大物狙いのものとなりますので、最小の16を選びます。最後の10.0というのは内径で、こちらのACSに関しては内径が予め樹脂により調整されており、外径10mmのカーボンパイプを選んだことによりテサテープによるかさ増しは不必要で接合可能となりました。
ワインディングチェック
完成した今思えば、見た目など1オンスも気にしないロッドづくりにおいては不要だったかもしれません。いい感じの色合いのスレッドでかさ増しして上からエポ塗りでもよかったです。必要部分は設計図にありますが、10mmカーボンパイプにはめ込むものに関しては当然10mmで、もとのブランクスにはめ込んでリールシートの先端部を隠すものに関しては8mmのワインディングチェック(下画像)を購入しました。後者に関しては購入してよかったかもしれません。結局わずかにもとのブランクスと径の差があるので、近い色のスレッドで調整しましたが。
リールシートは絶対必須ですが、リールシートの後部に装着するリアグリップも絶対必須となります。もしなければ、握った際に手がはみ出てしまうため、キャストできないでしょう。ケチケチでいくならば、手が当たる部分だけ野球バットのグリップテープやブチルテープでかさ増しすればいいでしょうけど、リアグリップはEVAでしたら高いものではないため買ったほうが無難です。
※当初、ガングリップ型にしてグリップまわりをすべて自作する案もよぎりましたが、こだわりの方向性が違うように感じたためパスしました。
リールシートとリアグリップの継ぎ目には、リアリールシートリングが必要となります。無いと少し不格好というか、うまい接着にならないと思います。
ガイドまわりを安上がりに
ガイドに関しては、トップガイドは折れた部分を利用して装着する以上、半端なサイズのため単品購入必須ですが、それ以外のガイドはセット品で安く済ませました。折れたトップ部分が実測2.7か2.8mm無いくらいで、ちょうどイシグロでセール品だったトップガイド2種類を装着したところ、2.8のほうは余裕ありで2.6のほうがキツめだったので、少し削って2.6を最終的に装着しました。
なお、前回も考えた既存ガイドの再利用ですが、最終ガイドのみSiCなので利用できるかもと思いましたが、形状や高さの都合で結果的には使うことはありませんでした。
製作の流れ
10mmカーボンパイプに必要部材を仮置き
まずはカーボンパイプに部材をハメて並べます。サイズ周りは問題なし。アンバサダーとワインディングチェックの色合わせも完璧でした。
もとのグリップを分解
前回の作業ではグリップまわりを分解することはなかったので、なにげに人生初のコルクグリップバラし作業となりました。結果的に切断位置からしてすべてもぎとる必要はありませんでしたが、キレイにしてしまったほうがいいですね。その後、ある程度余裕をもたせて切断、サンディング。グリップトップの飾りとなっているテーパー樹脂部品(下画像)は再利用も考えましたが、部材を傷つけず抜くことが無理と判断、ブランクを傷つけないように切断廃棄しました。このテーパー樹脂部品を採用するロッドはほとんど見かけないため、ある意味貴重だったかも。
ブランクをテサテープでかさ増し、8mm弱に統一
もとのブランクは最も太くても完全に8mmには到達しませんが、だましだまし8mmくらいにはなります。一方で10mm(内径8mm)カーボンパイプが装着される範囲でもっとも細い先端部は7.6か7.7くらいなので、テサテープでテーパーを解消するようにかさ増しします。エポキシの逃げを作るため間隔を開けて巻きますが(密です!ではありません)、カーボンパイプが引っかからない程度に抜き差しを繰り返して1区画ずつ丁寧に巻いていきます。
最終的に2ピースそれぞれは同じ長さにするため、カーボンパイプの終端10センチ弱はカットされることになります。このあたりの長さ決めには、安価な通常のマスキングテープが活用されます。
接着には90分エポキシを採用
選択肢としてはダイソー10分エポキシ、コニシの5分、30分、90分(Eセット)とありましたが、なんとなく耐久性を考えて90分硬化を採用。90分の場合、90分以内に張り合わせてね、ということで、硬化は8時間、余裕を持ってそれ以上みなければなりません。次の作業に移るためには、朝やって夜か、夜やって一晩明かすことが必要となります。
あくまでカーボンパイプの接着のみで、各部材は仮置きです。以下でくるくるした様子をTweetしています。
ワインコルクに穴あけし、各部材の接着(分割行程)
今回、エンドグリップはワインコルク(正確にいえば、安物のシャンパンコルク)を利用するという企みでした。既製品のほうがよかったかなとも完成後に思いますが、これはこれでいまのところ大丈夫そうです。無理な力が加わらなければ、もともとかなり頑丈なコルクなので十分使えそうです。貧乏根性をあえてこういう部分で発揮してみます。
部材の接着は一気に行わず、以下のような分割作業となりました。
一気に行うと微妙なズレが心配なほか、エポキシがはみ出たりして取り返しがつかなくなる恐れがあったためです。時間はかかりましたがミス無く終えました。
懸念材料はガイドの位置のみ
前回ではうらしま堂の旦那さんに位置決めをしていただいたため、当初より他の作業がすべてうまくいったとしてもガイド位置のみどうすべきかというのをずっと悩んでいました。製品やブランクによって厳密に決まってくるでしょうし、最悪適当でいいやとは思っていましたが、実情はあっさり解決しました。
というのも、ガイドセットの説明書にガイド位置の案内も載っていたのです。ガイド位置も載ってないかな~と思ったら載ってました。当たり前っちゃ当たり前ですね。スターターセットですし。ただし、6ft~7ft用で、当ロッドは7ft+10cmくらいになるため、最終的にリールから最終ガイドまでの距離は長くなりました。
見づらいですが、説明書どおりにしたところ、ガイド位置はすべてトップセクションに集約されました。マーキングしてある位置です。7ftちょいという長さに合わせて電卓叩いてそれぞれ割合で少しずつ伸ばして、最終ガイドのみバットセクションにつけるように調整すればよかったんですが、とりあえずそのままにしてみました。もっと言えば、もとの最終ガイドを再利用して新たな最終ガイドとして使えないかと仮止めで当てがってみましたが、比べると小さいし、いびつになるため、却下。もう少し大きければ全然使えたと思います。
ラッピングスレッド巻きに関しては巻き方を忘れていたものの、見てすぐに思い出した感じです。前回から半年、前回使ったラッピングスレッドのCOBWEBがそのままボビンに通されていたので、そのまま使いました。タイイングを全然していない証ですね。接着にはダイソーエポ(を薄める)のほうが良さそうだとは思っていたのですが、90分エポキシを薄めて使ってみました。
先に言ってしまえば、48時間経過後もベタベタは取れません。やはりダイソーか、ちゃんとしたラッピング用のエポキシを使うべきだったかもしれません。見た目は白濁せず良好です。
完成!終わりよければ全てよし
かくして、6ft2ピース6番のSAGEフライロッドのベイトロッドコンバート改造は完了いたしました。スピニングのほうの練習もあまりやらないなかで、とにかくやりたいこと先行という感じではありますが、問題や大失敗、不足等なく終わったのでよしとしましょう。懸念材料としては、やはりリールから最終ガイドまでが遠いため、ロッドがベンドしたときにどうなるか。そもそもそこまでの大物を釣ることがあるのか。バスにしか使えず結局使わずじまいか。そのあたりは、今後の糸屋の気分次第です。
フックキーパーは流用。グリップまわりは個人的にはお気に入りです。振りやすいように感じます。ブランクタッチ仕様は、純粋なブランクではなく1本カーボンパイプを重ねた上でタッチしているので効果のほどはさだかではありませんが、触れるならたしかに触れたほうがいいのかも。スリムでかっこいいですしね。
スピニングのとき同様、残るは練習および実釣、そしてこちらのベイトロッドに関してはルアー製作となりますが、糸屋のやる気は続くのか、お蔵入りになるのか。乞おうご期待という感じで今回は失礼いたしました。